退職金の投資先を思案中

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はじめに

5月に15年勤務した会社を退職した。

退職金と諸々合わせて数百万の現金を入手したが、当然現金で保有しているとインフレおよび円安によって価値が日々減少していく。投資先をグダグダと検討しているがいつまで経っても決められないのでブログにまとめて、各投資先のメリット・デメリットを改めて考察し、自らの判断の助けとしたい。

米国株インデックスETF投資

米国株インデックスETFとは

まずは最もメジャーな投資先である米国株インデックスETF投資について考察する。当然米国株インデクス投資信託であるオルカンやeMaxis Slim米国株式(S&P500)も投資先が同じなのでメリット・デメリットも共通である。

メリット

1.全世界の経済成長に合わせての資産成長が期待できる

過去100年間の平均経済成長期待値は6%前後だ。全世界株ならば同様の成長を期待できる。

nomura.co.jpより参照。

2.インフレ/デフレ対策

企業業績は物価変動に連動する。2020年以降は世界的に燃料費・原材料高騰によるインフレが発生したため、株式指標であるS&P500や日経225は過去最高水準にある。

yahoo!financeより参照。過去5年間の株式インデックスファンドの値動きのチャート。

2020年3月にロナショックで大暴落。しかし半年ほどで回復。その後世界中でロックダウン等があり金余りが発生、株式市場へ資金が大量流入した。その後株高の状態が約2年間続いた。

デメリット

1.暴落リスク

直近20年での世界的暴落は2つ。どちらもインデックスファンドが一時的に30%-50%を超える下落幅を記録した。100年ほど資本主義経済の歴史を振り返えると、長くとも2年ほど耐えれば回復する。しかしながら全資産をインデックスファンドで保有している場合、例えばコツコツ貯めた1000万円資産が1,2週間内に700-500万円まで減少するのは精神的にはかなりキツい。パニックを起こして売却して大損をスル可能性がある。これが株式投資へ生活資金を投入してはいけない理由だ。多少予想がはずれようが自分の先の1,2年の生活に影響しないように投資先を決めるべきだ。

2008年リーマンショック

リーマンブラザーズ証券破綻をきっかけに顕在化した。米国住宅債券の中で貸倒れリスクの大きいもの(サブプライムローン)を代表する、インターネット普及によって急速に膨れ上がったマネー経済の複雑な金融商品の信用不安が全世界で連鎖的に起きた。

2020年コロナショック

2020年3月新型コロナウイルス世界的大流行による経済先行き不安により発生した。

野村アセットマネジメントHPより参照

2.為替リスク

米ドルでの購入となるため為替変動の大きさ(ボラティリティ)がそのままリスクとなる。

直近2年の例だと、2020年7月は1ドル108円前後、2024年7月は1ドル160円前後で48%も変動があり、高配当株式の配当利回り3-5%、国債利息2-4%が一瞬で吹っ飛ぶほどの変動リスクがある。

SBI証券より参照。

米国債券ETF投資

米国債券ETFとは

米国債=アメリカ政府が毎年国家運営のために発行する債券。ETF=上場投資信託。株式のように市場で即時売買可能である債券のファンドだ。

2. 主な債券ETF

筆者が現在保有している主な債券ETFはAGG,TIP,VGLTだ。どれも米国政府債券(米国債)が主な組入銘柄だ。TIPは物価連動型、VGLTは償還期限10年以上のものだ。

3.2024年7月現在の債券市場

パンデミック後の10%を超える高インフレ対策のために、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会,Federal Reserve Board)がFF金利(Federal Found Rate, フェデラル・ファンド金利)を2022年から段階的に上昇させた。日本における日銀の無担保コール翌日物金利に相当する機能をもつ。いわゆる政策金利。市場に流通するマネーの量を操作する。

2024年7月現在はウクライナ戦争開戦後の資源高を起因とする高インフレ対策のため政策金利は非常に高い水準に設定されている。FRBは景気および雇用を犠牲にして、より市場経済に悪影響を与える8-10%の高インフレを抑制し、インフレ率前年同月比2-3%台を目標に金利を調整している。

SBI証券より参照

メリット

1)毎月分配金がもらえる

現在はFF金利が5.5%の高金利となっており、債券価格は低い。AGG等のリスクの低い債券で3%前後の分配金が期待できる。筆者は現在は年間数十万円の分配金を受け取っている。株式の配当金よりも安定しているため、債券の分配金で生活費をすべてまかなえることが理想的ではある。ただし資本効率はよくないため多額の資産を必要とする。

デメリット

1)債券は成長しない

アメリカ政府にお金を貸して利子を得ているだけなので、株式会社のように利益がでるわけではない。政策金利に合わせて金利と価格がシーソーの関係で上下するだけだ。

2)資本効率が悪い

期待リターンは2-3%だ。資本効率はよくない。株式であれば配当3%, 成長6%が期待リターンとなるため投資額に対して年間10%以上のリターンも珍しくはない。

3)売買タイミングが難しい

金利が高い(=価格が低い)時期に購入して、金利が低い(=価格が高い)時期に売却して数%の利益を得る。毎月の消費者物価指数(CPI)やFOMCの発表、3ヶ月に一度のドットチャート等、経済ニュースを追って売買タイミングを判断する。

yahoo!financeより参照。過去2年間の債券ETFの値動きのチャート。

注記

株式インデックスファンドも売買タイミングが難しいのは同様だ。ただし難しすぎて予想することが無駄であるといったほうがよい。債券価格の上下(=FF金利の操作)はFRBのFOMCを毎月追っているだけである程度は素人でも予想可能だ。株価の予想は、その市場環境における企業の今後3-5年後の利益額をビタビタに予想することと同一である。そんなことはバフェットだろうがソロスだろうが誰も不可能である。

米国高配当ETF投資

米国高配当ETFとは

インデックスファンドと同じくS&P500組入銘柄に投資する。だだし高配当の数十社、数百社を抜き出している。例えば代表的なETFの一つであるSPYDはS&P500の中の高配当上位80社を抜き出している。SPYDの直近1年の配当利回りは4.53%である。リスクとしてはインデックスETFと債券ETFの中間だ。

メリット

配当利回りが多い

代表的インデックスファンドVTI配当率1.41%に対して、SPYD配当利回り4.53%。3%以上配当利回りが多い。また高配当銘柄は安定した業績の会社が多く、株価の変動の大きさ(=ボラティリティ)が小さい。日々の株価の変動を比較的気にしなくてよい。代表的な構成銘柄はタバコ会社、銀行などだ。

デメリット

低成長率

業績が安定している=低成長率なので元本の資産は増えにくい。そもそも高成長企業は研究開発や設備投資をするので、配当金の源である利益剰余金を多く残さない。

国内高配当株投資

国内高配当株とは

筆者は配当利回り3%以上の配当を5年以上継続している企業と定義している。配当利回り=配当額/株価なのでその日の株価次第で変化するので概ねの基準ではある。この基準をクリアしたうえで割安な企業を探す。筆者の割安の定義は会社価値/時価総額が2倍以上の会社のことだ。会社価値は5年分の純利益と純資産から計算する。計算式や考え方は長くなるので割愛する。簿記2書籍「MBAバリュエーション (日経BP実戦MBA2)森生 明」がわかりやすい。素人が公開資料だけで計算するので精度はあまりないが投資判断には充分だ。細かく計算したところで意味がないからだ。実際の市場で企業買収する場合、TOB価格は直近株価に30%以上のプレミアムを乗せることが多い。数%の誤差など意味がないのだ。会社価値/時価総額が2倍ということは実際の会社価値の半額で売っているということだ。

メリット

為替リスクがない

前述の通り、株価の増減のリスク以上に為替変動の影響は大きい。日本円とアメリカドルの為替市場は1日100兆円以上の取引がある超巨大市場だ。そのため日銀が介入するにしても数円円高方向へ動かすのに10兆円前後の大金が必要になる。

とにかく為替リスクがないということは日本国内へ投資する大きな理由である。

決算情報の入手が容易

「企業名 IR」で検索すれば上場企業であれば、決算短信のPDF資料が容易に入手できる。基本的には決算短信記載内容だけで投資判断は可能だ。ただし、決算短信の内容を理解するには簿記2級程度の知識が必要だ。ただし仕訳や決算書の作成等の作業スキルは必要ない。資格自体を取る必要はなく参考書を読んで知識だけ手に入れればよい。企業業績の概要を知りたい場合は大手ネット証券で無料参照できる会社四季報の情報で十分だ。

デメリット

国内市場は低成長

日本が低成長であるというのは事実。しかし下記GDP推移データより明らかな通り、高成長な大国はアメリカ、中国、インドだけだ。ドイツ、イギリスといった欧州の大国も急成長はしない。最近の話題は、旧宗主国であるイギリスがインドにGDPを抜かれたこと、15年ほどアメリカ中国に次ぐ3位だった日本がドイツに抜かれたこと、である。(日本円/ユーロの為替の影響がかなり大きい)

個別株のリスクは大きい

個別の会社ごとに株主構成、経営者が異なるため、インデックスファンドと違い個別リスクが存在する。セグメント別の売上構成、利益構成。地域別の売上構成、利益構成等注意が必要だ。例えば近年では売上構成50%以上が中国の日本企業も珍しくない。当然有事のリスクがある。また直近の話題だと東芝の上場廃止、シャープの3期連続巨額赤字で上場廃止寸前等、伝統的で有名な巨大企業の経営不振も珍しくない。またテレビCMをバンバン出している企業でも数年連続の赤字企業は多くある。例えば楽天やライザップ等だ。当たり前だが有名だからという理由だけで投資してはいけない。決算短信まで見に行かなくても、会社四季報の純利益の欄を確認するだけでも危険な銘柄は回避できる。

まとめ

現在はインデックスファンド60%、米国債ETF30%、高配当米国株10%、国内高配当個別株10%の割合で運用中だ。アメリカで利下げが始まると米国債価格は上昇、配当利回りは下がるので保有割合を減らす予定。高配当米国株の保有割合を増やす計画だ。