2026年1月8日、株式会社ファーストリテイリングが発表した2026年8月期 第1四半期(2025年9月〜11月)の連結決算は、同社が名実ともにグローバル・リテール企業としての地位を盤石なものにしたことを印象づける内容であった。
第1四半期として初めて売上収益が1兆円の大台を突破。これは単なる通過点ではなく、海外ユニクロ事業の成長が加速していることの証左である。本稿では、損益計算書(P/L)の数値分析に加え、貸借対照表(B/S)の変化から見える財務戦略についても考察を加える。
連結業績ハイライト:利益率20%超の高収益体質へ
連結業績は、売上収益・利益ともに過去最高を更新した。特筆すべきは、売上の拡大以上に利益の伸びが著しい点である。
| 項目 | 金額(百万円) | 前年同期比 | 営業利益率 |
| 売上収益 | 1,027,745 | +14.8% | – |
| 事業利益 | 205,647 | +31.0% | – |
| 営業利益 | 210,914 | +33.9% | 20.5% |
| 四半期利益 | 147,445 | +11.7% | – |
連結営業利益率は前年同期の17.6%から**20.5%**へと大幅に改善した。製造小売業(SPA)において、20%を超える営業利益率は極めて高い水準である。これは、売上規模の拡大による固定費比率の低下に加え、値引き販売の抑制による粗利益率の改善が寄与している。
セグメント別分析:稼ぐ力の源泉
各セグメントの収益性を「営業利益率」の観点から比較すると、それぞれの事業フェーズと課題が浮き彫りになる。
海外ユニクロ事業:成長と収益の両立
- 売上収益:6,038億円(+20.3%)
- 営業利益:1,183億円(+41.6%)
- 営業利益率:19.6%
グループ全体の売上の約6割を稼ぎ出す大黒柱である。欧米でのブランド認知向上と新規出店の成功が続き、中国大陸でも冬物需要を的確に捉えた。営業利益率が約20%に達しており、海外展開が「投資フェーズ」から完全に「回収・収益拡大フェーズ」に入っていることがわかる。
国内ユニクロ事業:成熟市場でも高収益を維持
- 売上収益:2,990億円(+12.2%)
- 営業利益:629億円(+20.6%)
- 営業利益率:21.0%
国内市場は成熟していると言われるが、営業利益率は21.0%とグループ内で最も高い水準を維持している。暖冬傾向の中でも、10月以降の気温低下に合わせてヒートテックやパフテックなどのコア商品を拡販できたことが勝因だ。在庫コントロールの精緻化が利益率を下支えしている。
ジーユー事業:体質改善が数字に表れる
- 売上収益:913億円(+0.8%)
- 営業利益:117億円(+18.6%)
- 営業利益率:12.8%
売上の伸びは微増に留まったものの、利益率は前年同期の10.9%から12.8%へ改善した。品番数を絞り込み、売れ筋商品に経営資源を集中させる戦略が奏功し、値引きロスが減少している。
貸借対照表(B/S)の変化から見る財務戦略
損益計算書(フロー)の好調さは、貸借対照表(ストック)の健全化にも寄与している。前期末(2025年8月31日)と比較し、3ヶ月間で生じた大きな変化に注目する。
総資産の増加とその内訳
総資産は前期末比で4,270億円増加し、4兆2,864億円となった。主な増加要因は以下の通りである。
- 現預金および金融資産の増加「現金及び現金同等物」が304億円増加しただけでなく、「その他の短期金融資産」が1,601億円も増加している(8,997億円→1兆598億円)。これは、手元流動性を確保しつつ、余剰資金を安全性・流動性の高い金融商品(定期預金や債券等)で運用していることを示唆している。金利上昇局面において、豊富な資金量は財務収益の改善にも寄与する。
- 営業債権と棚卸資産の季節変動「売掛金及びその他の短期債権」が994億円増加し、倍増に近い動きを見せている(964億円→1,958億円)。また、「棚卸資産(在庫)」も351億円増加した。これらは、冬物商戦のピークである12月〜1月に向けた在庫の積み増しや、クレジットカード決済等の回収サイトによる一時的な売上債権の増加と考えられる。第1四半期特有の季節要因であり、売上の伸び(+14.8%)を考慮すれば健全な範囲内といえる。
負債・資本の動向
- 仕入債務の増加「買掛金及びその他の短期債務」が1,184億円増加した。これは前述の在庫積み増しに対応するものであり、事業活動の活発化を裏付けている。
- 為替換算による資本の増加純資産の部では、「その他の資本の構成要素」が1,629億円増加している。この主因は、円安進行に伴う在外子会社の資産評価額増(為替換算調整勘定の増加)である。海外売上比率が高い同社にとって、円安はP/L上の収益押し上げ効果だけでなく、B/S上の資産価値増大にも大きく寄与していることがわかる。自己資本比率は58.4%と引き続き高水準を維持しており、財務的な安全性は極めて高い。
結論と今後の展望
今回の決算は、ユニクロというビジネスモデルがグローバル規模で再現性を持ち、かつ高い利益率を確保できることを証明した。
P/L面では、原材料高や為替変動のリスクを吸収できるだけのブランド力と価格決定力を持ち合わせていることが確認できた。営業利益率20%超という数字は、単なるアパレル小売業の枠を超え、高付加価値ブランドとしての地位を確立しつつあることを示している。
B/S面においても、潤沢なキャッシュフローを背景に、在庫投資や戦略的な資金運用を行う余裕が見て取れる。短期的な債権・債務の増加は成長に伴う健全な動きであり、懸念材料は見当たらない。
通期業績予想も上方修正され、売上収益3.8兆円、営業利益6,500億円を見込む。世界的なインフレや地政学的リスクは依然として存在するものの、LifeWear(究極の普段着)への需要は底堅く、ファーストリテイリングの成長ストーリーに揺るぎはないと言えるだろう。



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